調査捕鯨を巡る最近の動向


捕鯨 インフォグラフィック

現在、ヨーロッパを中心に、EU(欧州連合)に働きかけて、日本の調査捕鯨を中止させようとする国際的な取り組みが進んでいます。

日本の南極海調査捕鯨を中止させるための国際的な取り組み

日本の南極海調査捕鯨に反対するイギリスの鯨類保護団体等が、EU(欧州連合)に対して、次のような訴えを起こしています。

「日本は毎年、鯨を捕殺している。この先12年で、総計4000頭の鯨を南極海で殺そうとしている(新捕鯨計画書:NEWREP-A)。しかし、EUは捕鯨を支持していない。EUの大多数の人々は、捕鯨を支持していない。鯨に友好的なEUと日本のような国、つまり、国際司法裁判所の禁止命令を無視し、南極海で毎年333頭の鯨を12年間も殺すと公言している国が、EUと新しい自由貿易協定を結ぶことは、容認できない」

という訴えです。EUは、これまでに、日本が調査捕鯨継続の決定をしたことに対して、正式に抗議を行なっていますが、日本に国際法を順守させるために、さらに行動を起こすことをEUに強く要求しているのです。鯨類保護団体の「Whale and Dolphin Conservation(WDC)」は、この活動を支持する200,000名分の署名を、すでに集めたと公表しています。

http://uk.whales.org/news/2016/03/internal-pressure-on-eu-to-take-more-action-over-japanese-whale-slaughter

なぜこのような国際的な働きかけが進んでいるのでしょうか?その経緯の概略を以下に記します。

南極海「調査捕鯨」は国際法違反、日本に調査捕鯨中止命令

国際司法裁判所(ICJ)は、2014年3月31日、日本が行なっている南極海での調査捕鯨は国際法に違反しているとの判決を下し、日本に対して「南極海調査捕鯨を中止」するよう言い渡しました。

世界で調査捕鯨を行なっている国は、日本だけです。南極海が公海であり、捕鯨禁止とされる「サンクチュアリ(鯨類保護区)」であるにもかかわらず、日本だけが「国際捕鯨取締条約」を根拠に、南極海で調査と称する捕鯨を続けてきました。しかし、国際司法裁判所(ICJ)は、日本の調査捕鯨は、「国際捕鯨取締条約」が認める「科学目的の調査」にはあたらないとしました。また、南極海での調査捕鯨は、「モラトリアム(商業捕鯨一時停止)」及び「サンクチュアリ(鯨類保護区)」の保全への違反であると結論づけ、捕鯨中止の判決を下したのです。この国際司法裁判所(ICJ)の判決によって、日本は、調査捕鯨を正当化して継続する拠り所を完全に失いました。

それでも、続ける調査捕鯨

日本政府は、国際司法裁判所(ICJ)の判決に従うと表明しました。しかし、「国際捕鯨取締条約」第8条が調査捕鯨そのものを否定しているわけではないことを根拠に、調査内容を変更して、南極海での捕鯨を続けることを決めました。「科学的研究のため」なら許されるという考えです。調査捕鯨を継続するためには、計画書を新しく作り直してIWC(国際捕鯨委員会)に届け出ることになっています。2014年11月、日本政府は、IWCに新調査捕鯨計画書(NEWREP-A)を提出し、2015年11月27日、南極海での調査捕鯨の再開を宣言しました。

こうして、2015/2016期に、南極海で333頭以上のミンククジラを捕獲、その内、200頭以上が妊娠しているメスだったと言われています。

新調査捕鯨計画書(NEWREP-A)への国際的評価

日本がIWCに提出した新調査捕鯨計画書(NEWREP-A)に対して、2015年5月、30を超える国の約500人の科学者が、新調査捕鯨計画書は、科学調査ではなく、政治的な理由から行なわれる調査だと指摘、激しく抗議し、IWCに日本の提案を拒絶するように求めました。科学者たちの中には、ジェーン・グドール、ロジャー・ペイン、シドニー・ホルト、エリック・ホイトなど、日本でも名の知られている世界的な学者たちが含まれています。

エリック・ホイトは、次のように述べています。

「“科学の名のもとに”捕鯨を継続するという日本政府の提案は、無知、利己的、著しく時代錯誤である。『南極海サンクチュアリ(鯨類保護区)』で、捕鯨を再開することは、恥ずべき行為としか言いようがない。国際司法裁判所及び国際科学コミュニティ―は、声を大にして、はっきりとそのように述べてきている。なぜ日本政府は聞こうとしないのか、世界がいぶかしく思っている。科学者は政策や保護サイドに巻き込まれることを嫌がることが多い。だが、それにも関わらず、これほど多くの世界中の科学者たちが、そろってこの問題に声を挙げていることは、驚くに当たらない。日本の捕鯨産業の意図は、曲解(こじつけ)であり、科学概念の悪用であることを示そうとしているのだ」

日本の調査捕鯨は「商業的、政治的利益のための」大量捕殺

1986年にモラトリアム(商業捕鯨一時停止)が実施されて以来、2013年までに、日本は南極海で「科学調査」だと主張して、13,000頭以上の鯨を捕殺しています。平均して、年間500頭近い捕殺です。多数の科学者たちの反対を押し切って、日本が「科学調査」と称して2015/2016期に、南極海で捕殺したのは333頭以上です。現在、野生動物の調査研究は、できる限り非致死的手法をとることが常識になっています。もし、チンパンジー、あるいは、クマ等の大型哺乳類の生息数の動向や生態、環境との関わりを調査研究すると主張して、年間300頭を超える数を捕殺し、副産物として得られたその動物の肉を換金し、次の調査研究に役立てるとしたら、だれが、それを、科学的な調査研究であると認めるでしょうか?しかも、これまでの13,000頭を超える捕殺によって得られた科学的な成果について、500名を超える学者がごく限られた成果にすぎない「科学的な失敗」と称しています。新調査捕鯨計画書(NEWREP-A)についても、「科学調査とは認められなかったこれまでの調査捕鯨(JARPA、JARPA Ⅱ)と本質的に何ら変わるところがない。」つまり、「科学ではなく、商業的、政治的利益のための」捕殺計画であるとみなされています。

新調査捕鯨計画書の実施は科学への冒涜、国際司法制度への侮辱

約500名の学者が、新調査捕鯨計画書(NEWREP-A)の実施を、科学そのものへの冒涜であり、国際司法制度への侮辱だと捉え、前述したようにIWC科学委員会に新調査捕鯨計画書(NEWREP-A)を拒絶するように強く求めています。

IWC科学委員会は、2015年 6月に委員会内で新調査捕鯨計画書(NEWREP-A)を検討し、日本政府に対して、2016年10月に開かれるIWCの次回総会で検討するまでは、日本政府が南極海での捕鯨を進めないように勧告しました。

しかし、日本政府は、国際司法裁判所の判決も、学者の抗議や提言も、IWCの勧告も、非致死的調査を求める時代の流れも、すべてを無視して、南極海での捕鯨に許可を出し、自称「調査捕鯨」を実施し、300頭をゆうに超える鯨を捕殺しました。

 
以上のような事情を受け、何とか日本の南極海調査捕鯨を中止させようとする国際的な取り組みが進んでいるのです。

日本政府が国際法を無視して行動したことが、日本の国としての品位を貶め、外交的に負の影響を与えるだけでなく、経済面でも大きな影響を与え、捕鯨問題が経済的脅威にもなり得ることを示しています。