最近の動向


会報No.126より (2004年2月10日発行)

イルカの追い込み猟を巡る最近の動向
―日本のイルカ追い込み猟に世界的な非難―

本会ではイルカ「」ではなく「」の表記を使用しています。イルカは哺乳類で、魚ではないからです。ただし、一般向けの「要望書」等では、従来の慣例に従って、当分の間、「漁」の表記を用います。

昨年(2003年)の太地での出来事:

 太地では今期も昨年10月に例年通りにイルカの追い込み猟が始まりましたが、9月末近くから現地に滞在して猟を監視していたアメリカの民間団体「シー・シェパード」(Sea
Shepherd Conservation Society)が、追い込み猟の様子を撮影し、ビデオや写真を海外のメデイアに送り、追い込み猟の実態を現地から世界に流すことを始めました。

 このことを巡って、「シー・シェパード」のメンバーと、ビデオ撮影及びイルカ猟の監視を阻止しようとする太地の漁師の間でいざこざがあり、警察が出動することもありましたが、昨年11月18日に「シー・シェパード」のメンバー二人がイルカを囲ってあった網を解き、イルカを逃がしたということから、威力業務執行妨害で逮捕されました。

 いっぽう、「シー・シェパード」によって配信されたイルカ猟の映像の悲惨さに、日本でのイルカの追い込み猟に対する批判が海外で高まり、11月の始め及び12月に、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス等世界各地の22都市で、追い込み猟の中止を要請する抗議デモが起こり、抗議は現在も続いています。しかし、このことは日本ではまったく報道されていません。

イルカ猟

イルカの追い込み猟とは:

 まず、外洋でイルカの群れを見つけ、漁船から水中に大きな音を送り、イルカの備えている音波探知機能を撹乱させてパニック状態にし、漁船と魚網でイルカの群れを囲い込み、じりじりと群れを狭い入り江に誘導し、入り江の入り口を網でふさいだ後、群れを殺しつくす猟法です。水族館へ生きたイルカを売るときには、群れを殺す前に、傷のない2メートルほどの雌を選んで、吊り具に追いこみ、クレーンで引き上げます。捕獲されてパニック状態になったイルカが死亡することも少なくありませんが、それは、食用にまわされます。この作業のあいだ、海はイルカの流す血で赤く染まり、イルカの悲鳴が人の耳にもはっきり聞きとれます。イルカに過酷な苦痛を強いる、その凄惨な捕獲に、世界各国が追い込み猟を中止するように求め続けていますが、日本政府はイルカ猟を奨励しています。
 

年間、日本ではどのくらいのイルカ類が追い込み猟で殺されているのでしょうか?

 
現在、イルカの追い込み猟は、和歌山県太地と静岡県富戸で認められています。長崎県の壱岐では、害獣駆除の名目で年間捕獲枠50頭の追い込み猟が認められていましたが、現在は下記のように事情が変わっています。

長崎県壱岐のイルカ「追い込み猟」

 壱岐では、現在、これまで害獣駆除の名目で行なっていたイルカの「追い込み猟」を中止していることがわかりました。地元では、追い込み猟を「追い払い」または「追い飛ばし」と呼んでいます。

 地元の勝本漁協によると、今でも同漁協の「イルカ対策委員会」が、回遊してくるイルカの「追い払い」をしているそうです。しかし、現在の「追い払い」は、イルカを殺したり、「追い払っても自分から網に入ってくるイルカ」を生け捕りにしたりするものではなく、爆弾でイルカを漁場から追い払うだけのものだそうです。

 水産庁から出されていた捕獲頭数枠50頭は、現在、許可されていないそうで、イルカの生け捕りもここ数年行なわれず、地元のイルカ・パークへは、まったくイルカの補充をしていないということです。

 水産庁捕鯨班の記録では、壱岐での最後の捕獲は1995年で49頭となっていますが、壱岐の役場は1996年前半に20頭のイルカを捕獲したと発表していました。しかし、その後は、イルカを捕獲した記録はありません。

 イルカの追い込み猟は、水産庁が捕獲枠(捕獲頭数と捕獲を許可する種)を定め、和歌山県、静岡県など追い込み猟を行っている県の知事が、それぞれ操業の許可を出しています。両県の捕獲枠をあわせると、年間3000頭に近いイルカ類が、捕獲または生け捕りにされることになります。しかし、実際には、イルカ類は、種によっては、捕獲枠数を獲れないほどに減少しています。

 年間捕獲枠数(捕獲できる種と捕獲頭数)は以下のとおりです。

* 静岡県伊東市漁協富戸支所

スジイルカ striped dolphins 70頭
ハンドウイルカ  bottlenose dolphins 75頭
アラリ(マダラ)イルカ pantropical spotted dolphins 455頭
  合計  600頭

猟期は:9月1日から翌年の3月31日。

* 和歌山県太地漁協

スジイルカ striped dolphins 450頭
ハンドウイルカ bottlenose dolphins 890頭
アラリ(マダラ)イルカ pantropical spotted dolphins 400頭
ハナゴンドウ Risso’s dolphins 300頭
マゴンドウ pilot whales 300頭
オキゴンドウ false killer whales 40頭
  合計  2,380頭

猟期は:イルカ類―10月1日から翌年2月末まで。
クジラ類(ゴンドウ)―10月1日から翌年4月30日まで。

捕獲枠を守るための監視体制は?

 静岡県伊東市漁協富戸支所による捕獲枠違反操業は、1996年及び1999年に発覚。違反に対する罰則がないまま、不問にされましたが、2002年に罰則を伴う規制ができました。しかし、罰則を設けると同時に操業を一般の目から隠し、取材にも規制をかけるなどの措置がとられ、操業の監視には県水産課の職員が引き続き立ち会うことになりました。しかし、県職員は、いわば漁協と立場を同じくする立会人であるため、公正な監視機関となり得ないことが指摘されています。

 和歌山県太地町についても、同様の規制がかかりましたが、富戸と同様に公正な監視ができているかどうかについては、大きな疑問が残ります。

イルカの追い込み猟はどうして問題なのでしょうか?

 イルカ追い込み猟は、捕獲枠等についての違反を犯さない限り合法的なものですが、見過ごせない多くの問題点を抱えています。例えば:

  1. イルカは世界的に保護されている野生動物ですが、追い込み猟そのものが、これを無視した猟であること。
  2. イルカが繁殖率の低い動物であることを無視し、雌雄子どもの別なく、群れ全部を捕獲または殺しつくす可能性が高い方法をとっていること。
  3. 毎年イルカの生息数を無視した大量のイルカを捕獲していること。(捕獲枠については、実施された当時から、すでに研究者が疑問を提示していますが、一度も見直しが行なわれずに、今日に至っています。)
  4. 追い込み猟の対象種には、生息数がすでに危機に達している種があるとみられること。例えば富戸においては、スジイルカはまったく捕獲できない状態です。
  5. 信用できる監視体制ができていないこと。富戸の例を見てもわかりますが、漁協によって記録されている捕獲頭数などについては、常に信憑性が疑われています。
  6. 太地の場合、イルカの追い込み猟は漁協の「勇魚(いさな)組合」に属す限られた少数の漁師だけの収益につながるものにすぎないこと。
  7. イルカの肉は、水銀などの有害化学物質が日本政府によって定められた基準値をこえる汚染肉であり、人々の食用消費に向かないものであること。

エルザ自然保護の会の方針:

 エルザの会では、「追い込み猟」に反対する活動を続けていますが、すべての活動を合法的な手段で行なうことを方針にしています。いっぽう、海外には、「いま苦しんでいる動物を助けたい」または、「一般の人々の注意を喚起したい」、あるいは、「マスコミの関心を集めたい」という目的で、違法行為も辞さない方針をとる団体があります。このため、本会では、思い切った活動を日頃行なっている「シー・シェパード」の活動が太地で開始されて以来、日本の法律を守り、違法行為に走らないようにという警告を、海外の鯨類保護関係団体に送り続けてきました。本会では、あくまで現行の法律を犯さない立場をとっており、海外の一部団体が行なった違法な抗議行動には、参加していません。

  いっぽう、日本のイルカ猟を合法的な手段で中止させようと活動している海外の団体とは積極的に協力して「追い込み猟」を終わらせる努力をし続けています。これは実地調査によって、富戸の場合も、太地の場合も、海外からのいわゆる外圧が、イルカ猟阻止への大きな力になっていることが分かっており、イルカ・クジラ問題は外圧を上手に利用しなければ解決できないものと考えるからです。富戸の捕獲枠は上記のように600頭ですが、今期は、20数頭のみの捕殺にする計画です。このように富戸が今期、イルカの捕殺に消極的なのは、国内をはじめ海外からの活発な抗議が続いているからだという報告が、現地から入っています。

  イルカ・クジラ問題は、毎年開催されている国際捕鯨委員会(IWC)の会議などを通して、すでに国際的な政治問題になって久しいのですが、日本の団体だけでイルカの追い込み猟を全面中止させることは、まず、不可能と思われます。したがって、早急な解決は望めないとしても、海外に日本社会での現状を説明し、活動方針についても十分な理解を求め、協力して中止活動を続けることが必要です。

 富戸の場合は、海外団体の協力も得てイルカ・ウオッチングがスタートし、国際的集客促進による地域振興を図ろうという積極的な代替策ができましたし、あと一歩というところまできています。内圧と外圧で、富戸のイルカ猟を中止に追い込み、さらに、太地でも、一部の漁業者の利益を守ろうとして動物学的にも動物福祉の観点からも世界的な反発のあるイルカ猟を止めて、富戸と同様に新しく国際的な協力による地域振興に寄与できる町の再生を図ってほしいと願っています。

海外協力団体が本会の活動方針に合意

 
本会では、海外協力団体への資料の提供、関係各所への連絡などを積極的に行ない、イルカ追い込み猟の中止を目指していますが、前述のように、昨年太地で起きた違法反対活動の後、海外の協力団体に、日本社会での現状を説明し、活動方針についても、十分な理解を求め、「今後、日本の法律を無視した反対活動を行なわない」とする合意を得ました。

 また、日本ではイルカの追い込み猟やイルカを食用にしていることを、まったく知らない人が多いことから、まず、一般の人々にイルカの追い込み猟の事実を知らせる活動が必要であることを説明し、この活動方針についても海外協力団体の合意を得ることができました。現在、イルカの追い込み猟中止に向けてのさまざまな対策が国際的に検討されています。

イルカの追い込み猟を中止させるために、私たちができることは?

  1. イルカ猟中止を要請する手紙を書く。(上記「イルカの追い込み猟の問題点」を参照。各宛先のサンプルレターはこちらに掲載しました。県知事宛ての要望文は県水産課へも送付できます。)

宛先:

水産庁資源管理部管理課:

〒100-8907東京都千代田区霞ヶ関1-2-1
Fax:03-3502-0794
E-mail:whaling-section@nm.maff.go.jp

静岡県県庁水産資源室:
〒420-8601静岡県静岡市追手町6号9番
Fax:054-221-3288

静岡県知事・石川嘉延:
〒420-8601静岡県静岡市追手町6号9番静岡県県庁
Fax:054-221-2164
E-mail:governor@pref.shizuoka.jp

伊東市漁業協同組合:
〒414-0043静岡県伊東市新井1-1-18
Fax:0557-35-0756

和歌山県県庁水産課:
〒640-8269和歌山県和歌山市小松原通り1-1 
Fax:0734-31-2244

和歌山県知事・仁坂吉伸:
〒640-8269和歌山県和歌山市小松原通り1-1
和歌山県県庁
Fax:073-423-9500
E-mail:e0001003@pref.wakayama.lg.jp

太地漁業協同組合:
〒649-5171和歌山県東牟婁郡太地町太地3167-7
Fax: 0735-59-2821
漁協のE-mailは不通ですが、太地町役場へは メールが送れます。
taiji@town.taiji.wakayama.jp (太地町役場)

 

  1. 本会の要望書に署名して各自が宛先へ発送する。(こちらのページのPDFファイルをプリントアウトしてご利用下さい。多数の署名用紙が必要な方は事務局にご連絡下さい。)
  2. 静岡県伊豆半島富戸で始まった「城ケ崎イルカ&ネイチャー・ウオッチング」に参加し、実際にイルカ・ウオッチングをする。
    (問合せ先:光海丸船長石井泉氏 Tel:0557-51-8181)

  多くの人がウオッチングに参加することによって、イルカ猟に代わるイルカ・ウオッチング事業が、はじめて成立します。乗船者が払うウオッチング料金が、イルカ・ウオッチングを継続させるための経済的な支えになります。富戸のイルカ・ウオッチングが盛んになれば、富戸のイルカ猟は、ますますやりにくくなり、廃止に追い込むことができます。野生のイルカを見て、野生のイルカを保護しましょう。