図書紹介『 なぜ、いま「魚の汚染」か 』


日本科学者会議・日本環境学会編、2012年6月発行、本の泉社(1,800円)

エルザ自然保護の会は、会として、上記の図書を推薦します。

安全な食生活を送りたいと、だれもが願っています。私たち消費者にとって、食の安全は、一大関心事です。本会のアンケート調査によれば、消費者の80パーセント以上が、食品を購入する際に重要視するのは「食品の安全性」だと回答しています。しかし、実際には、有害化学物質による食品汚染についての情報は限られており、その限られた情報も、消費者に正しく伝わっていません。

例えば、水銀、メチル水銀、PCB、ダイオキシンなどの有害化学物質は、健康を著しく害する恐れがあり、低レベルであっても、特に児童や妊産婦への影響が大きく、こうした物質による汚染食品の摂取を避けることは、食品選びの基本だと言えます。昨年の原発事故以来、さらに、これに、放射能汚染食品への懸念が加わりました。

こうした環境の中、「食の安全」を得るためには、消費者が、今、自分たちが置かれている現状を、はっきり知ることが、どうしても必要です。何がどのように汚染されていて、どうすればその汚染の影響をできる限り避けることができるのか、また、危険すぎて、食品と見なすことができないものは何なのか等、確かな情報と、分かりやすい対処法の知識が、今ほど必要とされている時はなかったように思います。この時期に、本書が出版されたことは、極めて重要であり、時宜にかなっています。

本書は、主として、魚介類に含まれる微量有害物質に焦点を当て、水銀、メチル水銀、ダイオキシン、臭素系難燃剤、PCB、カドミウム、有機スズによる汚染の実態を取り上げ、さらに、放射性物質による海洋汚染、魚介類汚染についても、有益な情報を提供しています。専門家による記事は、データに裏打ちされており、納得のいくものです。一般消費者だけでなく、研究者や、学生にも十分役立つものと思います。また、子供の健康を守り、今の時代をできる限り健康に生き抜くために、各家庭に1冊は常備しておきたい書でもあります。

本書では、魚介類の中に、イルカやクジラの肉を含め、イルカ・クジラ肉の有害化学物質による高度の汚染をはっきり示しています。また、水銀問題についても、和歌山県太地町に言及し、独立した1章を宛てています。これは、これまでにない画期的な取り組みです。こうした形で、学者が行政に対して汚染物質に関する「法規制の必要性」と「漏れのない適用」を求め、「法規制の細心の見直し」を求めたことは、今までになかったことです。そこには、象牙の塔に引きこもるのではなく、専門家の知識を、消費者のために役立てようという、学者の信念が見てとれます。本会では、今日まで10年近く、主にイルカ肉の水銀、メチル水銀、PCB汚染の検査結果を報告し、対策をとるように厚生労働省や消費者庁に要請してきましたが、未だに対策が取られていません。この図書がきっかけになって、事態が改善されることを願っています。

本文中のコラムは、一般の人にも分かりやすく、丁寧に書かれており、本書を理解する助けになります。なお、巻末に掲載されている資料も、本書を理解する上で大変役立ちます。さらに情報を得たい人のためには、国内外の情報機関も紹介されています。索引によって、興味のある項目をさがすことも可能です。できるだけ多くの人が本書を手にして、日常生活に役立ててほしいと思います■