世界動物園水族館協会(WAZA)との会合


先般、スイスのグランで行われた、イルカの追い込み猟を巡る世界動物園水族館協会(WAZA)とNGOの会合について、以下に報告します。

イルカの追い込み猟を巡るWAZAとNGOとの初めての会合

(2014年)3月28日、スイス、アメリカ、日本のNGOが、スイスのグランにある世界動物園水族館協会(WAZA)の本部を訪れ、WAZAのexecutive directorであるジェラルド・ディック氏と、水族館におけるイルカの追い込み猟問題を話し合いました。

会合の目的

この会合は、スイス市民であるダニエル・ジョルト(Daniel Jolt)氏によって、提唱、企画されました。この会合で、3カ国のNGOは、WAZAに対して、もしWAZAの「倫理規範(Code of Ethics)」に違反している日本動物園水族館協会(JAZA)に、WAZAの「倫理規範(Code of Ethics)」を守らせることができないならば、JAZAをWAZAから除名するよう求めました。

会合の背景

WAZAは10年前から、イルカの追い込み猟に反対する立場をとり、イルカの追い込み猟で生け捕りにされたイルカを水族館が売買して飼育することを禁じる声明を出しています。しかし、WAZAの会員であるJAZAは、いまだにJAZA加盟水族館が追い込み猟で捕獲されたイルカを売買・飼育することを黙認しています。WAZAの会員であり、WAZAの傘下にありながら、WAZAの「倫理規範(Code of Ethics)」に違反し続けているJAZAの存在が、国際的に問題視されています。

本会が会合に参加した背景

本会は、国内外の保護団体と共に、JAZA加盟水族館及びWAZA加盟水族館に対して、追い込み猟で捕らえたイルカを売買・展示飼育しないように求めて活動してきました。

昨年来、日本の団体である「PEACE」、「ヘルプアニマルズ」と共に、JAZA及びWAZAに直接働きかけることも続けています。そうした中で、WAZAがイルカの追い込み猟に反対しながら、思い切った行動をとれないでいる理由がはっきりしてきました。それは、「イルカの追い込み猟は日本の文化、伝統の一部である」と言う誤解に基づくもので、WAZAは、このため、「文化というデリケートな問題」に踏み込めないでいたのでした。日本のNGOが、今回、この会合への参加要請を受けたのには、こうした背景がありました。

会合の参加者

この企画の提唱者であるスイス市民、ダニエル・ジョルト(Daniel Jolt)氏、アースアイランドインスティチュート・ドルフィンプロジェクトのリチャード・オバリー(Richard O’Barry)氏、スイスの保護団体オーシャンケア(OceanCare)の代表シグリッド・ルーバー(Sigrid Luber)さん、エルザ自然保護の会の辺見栄の4人。WAZA側からは、ジェラルド・ディック氏, 弁護士のLorenz Ehrler氏、事務官一人が出席しました。

当初、メディアの参加が予定されていましたが、突然、WAZAの意向で、それが変更され、WAZAとの会見は、上記4人だけに絞られました。記事を書くために参加したジャーナリストの参加も、拒否されました。

会合で話し合われたこと

WAZAとの会合は、まず、メディアを締め出して密室で行う会議になったことへの抗議で始まりました。WAZAが相手ではありますが、ヨーロッパのメディアが、この問題を取り上げる予定でしたので、突然メディアの同席を拒否されたことで、この会合を広く伝えることができなくなりました。

会議が1時間と決められていましたので、抗議の後は、出席者が簡単な挨拶をして、すぐに本題に入りました。私は、まず、日本に正しい情報を持ち帰るため、用意したレコーダーで、会議を記録したいと申し出ましたが、許可されませんでした。(何度か反論しましたが、時間がもったいないので、あきらめました。許可されなかった理由は、「誤解をうけるから」、と言う納得できないものでした。)

WAZAのジェラルド・ディック氏からは、まず、「WAZAは、イルカの追い込み猟からイルカを水族館に入れることに反対している。つまり私たち保護団体と同じ立場である」から、WAZA本部前でデモをするのはお門違いだと言うような話がありました。(当日、会合が開かれているあいだ、WAZAの本部前では、静かなデモが続いていました。)しかし、10年も、口先だけで、何ら実質的な行動をとらない事への抗議デモだという発言には、WAZAからの反論はありませんでした。

リチャード・オバリー氏は、WAZAが10年もの間、イルカの追い込み猟からイルカを水族館に搬入することに反対しながら、まったく何の成果も上げられないでいる怠慢さに抗議し、ここ10年間の「イルカの捕殺数、生け捕り数、今後の生け捕り数の予測頭数を示すグラフ」(エルザ自然保護の会制作)を掲げて、口先だけでなく、実際に行動するよう要請しました。

ダニエル・ジョルト氏、シグリッド・ルーバーさんは、WAZAの「倫理規範(Code of Ethics)」をとりあげ、その文言が、守られていないことを指摘し、WAZAの「倫理規範」を守らないメンバーを除名することは当然であると主張しました。

私は、当日、日本から持参した要望書をジェラルド・ディック氏に手渡し、「168もの団体が署名している。イルカ保護の団体だけでなく、犬猫保護の多くの団体、毛皮や動物実験に反対している団体なども、日本におけるイルカの扱いに、特別な関心をもって、要望書に署名している」と訴え、168団体の中には海外の団体はまったく含まれていないと説明しました。これには、ディック氏もかなり驚いたようで、改めて団体名を見直していました。また、「イルカの追い込み猟は日本の文化でも伝統でもなく、利益を目的にしたビジネスである」ことを説明し、理解して頂きました。

日本のNGOが、この会合への参加要請を受けたのは、このことを詳しく伝えるためだったとも言えます。WAZAの積極的な介入を促すための重要なポイントだと思います。

さらに、近年イルカの生け捕りと水族館への搬入数が、急上昇していること、また、WAZAが口先だけで何ら実質的な行動をとらなかったため、ここ約10年で、1125頭以上もの追い込み猟で捕獲されたイルカが水族館に搬入されたことを説明し、「日本の168団体は、もうこれ以上待つことができないので、言葉ではなく、即刻、行動によって、この問題を解決してほしい。何をしてくれるのか、私が日本に帰るまでに返事を頂きたい」とお願いしました。

WAZAからの提案と合意

会合の最後に、WAZA、JAZA,エルザ自然保護の会で、解決に向けた話し合いをするという提案がWAZAから出されました。WAZAがNGOとイルカの追い込み猟についての会合を開くと言うことは、これまでなかったことでした。しかし、何とも漠然とした提案です。具体化するために、更に話し合い、以下のことが合意されました。

1) 会合の出席者: 世界動物園水族館協会(WAZA)のジェラルド・ディック氏、 日本動物園水族館協会(JAZA)の山本茂行氏、日本のNGO(エルザ自然保護の会及びその他の関係団体)

2) 議題: 「WAZAのメンバーであるJAZA(具体的にはJAZAに所属する「太地町立くじらの博物館」など、複数の水族館)がWAZAのCode of Ethics(倫理規範)に従い、追い込み猟からのイルカの調達を中止することに向けた検討会」

3) 会合の開催日: 6か月以内、(次年度のイルカの追い込み猟が始まる前)

この会合の目的は、端的に言えば、「JAZAにWAZAの倫理規範を守ってもらうこと」です。もし、それができないならば、JAZAには、WAZAの会員としての資格がなく、従ってWAZAからの除名も、当然のことと考えます。しかし、現状を考慮して、例えば、「一定の期限を設けて、その期限内に倫理規範が守られなければ、JAZAをWAZAから除名する」という案がOceancare代表のシギ・ルーバーさんから出されました。私も、その案を強く押しました。いきなり除名と言うより、実現可能な良い案だと思います。もちろん「一定の期限」については具体的な期日を決め、引き延ばしの口実にならないよう注意する必要があります。
——WAZAのディック氏は、この提案を考慮すると回答しました。

日本でのWAZA・JAZA・複数の日本のNGO会議・その後の進展

日本の関連団体は会合開催に向けて、いろいろ努力をしていますが、すでに1カ月以上が過ぎました。本会からは、JAZAの山本氏に、WAZA本部での会合の報告、日本でのWAZAを交えた会合予定の次第をお知らせしましたが、それに対して受領通知もいただいていません。そのような中、シギ・ルーバーさんがWAZAのディック氏と電話で話し合い、次のようなことが分かりました。

1) WAZAのディック氏は、すでにJAZAと連絡をとっており、JAZAはディック氏に対して前向き(POSITIVE)な回答をしている。

2) エルザ自然保護の会がJAZAに会合開催の要請を出せば、JAZAから2~3週間で、会合についての詳細(日時、場所等)の連絡をエルザ自然保護の会に頂けること。

早速、エルザ自然保護の会からは、JAZAの山本茂行氏宛てに、「WAZA、JAZA、日本のNGOとの会合」開催要請の書状(5月11日付)を提出し、5月末日までに、ご回答を頂きたいとお願いしました。会合の日時等についての調整があるにしても、WAZA本部での合意に沿った会合が期限内に開かれることと思います■


スイスのグランで行われた静かなデモ

デモは、(2014年)3月28日、1時少し過ぎ、WAZA本部に通じる歩道から始まりました。200mほど、各自が用意したプラカードを掲げて、無言で行進しました。音なし、音楽なし、声も出さないという静かなデモで、3人ほど警官が付き添いましたが、何の問題もなく、WAZA本部の前に集合し、WAZA本部の会議室で話し合いが行われる間、1時間余り、静かなデモが続きました。

WAZA本部のあるグランは、交通の便が悪く、最寄りの鉄道の駅は無人駅で、タクシーも見つからないところですが、スイスだけでなく、イタリア、スペインなど数カ国から約40人が集まり、OceanCareが「のぼり」や展示机を出しました。スペインから駆け付けて、企画当初からダニエル・ジョルト氏と協働したマリアさん(Maria Claudia Heidemann)がデモで披露したパーフォーマンスは、圧巻でした。

数日前には雪も降って寒かったと言うことですが、当日は晴れわたり、あちこちで桜やレンギョウの花が開き、春そのもの。怒号がまったくない、にこやかなデモは、まるでピクニックのような雰囲気でした。

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デモ出発前にインタービューを受けるリチャード・オバリー氏

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WAZA本部に向かうデモ行進:マリアさんのパーフォーマンスと、その隣を歩くデモの主催者ダニエル・ジョルト氏

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WAZA本部に向かうデモ行進:「イルカの追い込み猟は日本の文化、伝統ではない」のボード(写真:Richard O’Barry)

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WAZA本部に向かうデモ行進:マリアさんのパーフォーマンスとリチャード・オバリー氏

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demo in GenevaWAZA本部に隣接する広場。参加者各自がボードを持参。

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WAZA本部に隣接する広場。左はOceanCareの展示

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