イルカフォーラム報告


緊急報告:

京都水族館建設に反対するイルカフォーラム

| 街頭アンケート | オバリー氏講演 | 京都市役所を陳情訪問 |

3団体主催によるフォーラム開催

2009年3月8日(日)、京都市の梅小路公園にて、同公園の一角に建設が予定されている水族館について市民に情報を提供し、水族館及びイルカ問題を話し合うフォーラムが、地元の「いきもの多様性研究所」、「日本環境保護国際交流会(J.E.E.)」と「エルザ自然保護の会」によって行なわれました。

京都市民の意見調査:水族館建設の是非を問う街頭アンケート 

 

街頭キャンペーン
写真提供:いきもの多様性研究所

3月8日午前中、イルカフォーラム開催に先立ち「いきもの多様性研究所」と「日本環境保護国際交流会(J.E.E.)」が中心になって、梅小路公園敷地内で市民に水族館建設の是非を問うアンケート調査が行なわれました。これは、イルカ水族館のきれいな写真と、そのイルカを調達するために行なわれる「イルカの追い込み猟」の写真の両方を市民に見てもらい、水族館建設賛成者には青いシールを、反対者には赤いシールを、どちらともいえない人には黄色いシールをはってもらうという方法で行なわれました。

街頭キャンペーン
写真提供:いきもの多様性研究所

 当日、この意見調査には63名が回答し、賛成15、反対41、わからない7という結果が出ました。アンケートに反対と答えた市民には、水族館建設を中止してほしいという署名書にサインをお願いしました。

 短い時間の調査でしたが、ここでも水族館建設には65パーセントが反対という結果が出ました。現在、70パーセントの市民が水族館の建設に反対しているといわれています。いずれにしても、住民の半数以上が京都に水族館はふさわしくないと考えています。

街頭で行なったアンケートの結果

イルカ専門家リチャード・オバリー氏の講演と質疑応答

 リチャード・オバリー氏の講演は3月8日午後2時から4時まで梅小路公園内の「緑の館」1階のイベント室で、70名が参加して行なわれました。まず、はじめに主催者の挨拶とフォーラム開催の経緯が紹介されたのち、オバリー氏の講演が始まりました。以下がその概要です。

 リチャード・オバリー氏プロフィールはこちら

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オバリー氏の講演
オバリー氏の講演
写真提供:いきもの多様性研究所

 わたしが住んでいるフロリダでもそうですが、世界のどこでも、国際的に「京都の人々は自然を愛し、京都は古い社寺のある美しい古都だ」と考えられています。もし京都に水族館ができ、イルカ猟によって捕獲されたイルカが展示されるようになれば、京都のイメージは大きく崩れてしまうでしょう。イルカを水族館で囲うことが、どんなに残酷なことかについて話をする前に、イルカがどんな動物であるかをお話しします。

 

イルカはどんな動物か

 イルカは「エコーロケーション」といって、超音波を出し、それがものにあたってはね返ってくるのを映像としてとらえることで、そのものの場所や、その材質までも見分けることができます。音によって仲間とのコミュニケションもしています。つまりイルカにとって、音は生活に欠かせないものです。人間よりもはるかに長い間そういう生活を続け、脳の容積も人間を超えています。

イルカを水族館で飼うことの問題点

 イルカを水族館に囲うことは、イルカから2つのことを奪うことになります。一つは、音の世界を奪うこと、もう一つは、家族を奪うことです。

水族館のコンクリートの水槽では、イルカは超音波を発してエコーロケーションを行なうことができなくなります。視覚だけでなく、音に頼って生活するイルカにとって、これは大変なストレスです。いっぽう、イルカは群れで社会生活を営む、極めて社会性の強い海洋哺乳類です。イルカを群れから引き離して水槽に入れることは、そのイルカから家族を奪うことであり、これはイルカに想像を絶するストレスを与えます。水槽に入れられたイルカは退屈のあまり死ぬこともあります。また、イルカの呼吸は、人間と違って意識的に行なうものであるため、イルカが自ら息をしないことを選んで死ぬこともあります。ストレスのため、水族館施設に入れられたイルカの寿命は、野生のものに比べてかなり低いものです。

(編集部注:野生のイルカは36年くらい生きますが、水族館では7年くらいしか生きないといわれています。死因はストレスによる免疫不全が多いとされています。また、アメリカの海洋哺乳類学者ナオミ・ローズ博士は「イルカはストレスや恐怖、強い困惑によって、“もう生きるのをやめよう”と自分で決めることができる」と述べ、イルカが自殺するという説を肯定しています。オバリー氏の腕の中で死んだキャシーという名のイルカについて、オバリー氏は自殺したのだと語っています。)

水族館は教育施設ではない 

水族館は教育施設だといわれ、正当化されています。しかし、これは大嘘(うそ)です。わたしは、1960年代に世界的にヒットしたテレビ番組「わんぱくフリッパー」のイルカ調教師としてイルカの捕獲から調教まで行なっていたので、はっきりそう言うことができます。わたしは 世界でも有数の高額所得者でしたが、嘘をつく専門家にはなりたくないと思い、イルカの調教師の職を辞し、水族館との縁を切りました。

日本にはイルカを展示する水族館等のイルカ施設が約50館ありますが、これはヨーロッパの水族館の合計数よりも多いものです。日本では、「子どもたちの教育」のためとして、水族館でイルカショーを行なっています。イルカの追い込み猟を行なっている和歌山県太地町にも「太地町立くじらの博物館」という水族館があり、ショーを行なっています。しかし、イルカを保護しようと立ち上がる人はいません。イルカを選別して水族館に運ぶ水族館の職員が、残酷なイルカ殺しをしているイルカの追い込み猟を手伝っているのが現状です。静岡県伊東市の富戸でも、水族館の職員が追い込み猟でイルカの選別をしていますが、その過程でイルカがぶつかり合って血を流し、1時間で海が真っ赤になります。このように水族館の職員でさえ野生動物の保護について理解していないのに、どうして水族館を訪れた子どもたちを教育できるというのでしょうか。このことからも、水族館が環境教育には役立たないということが明らかです。

イルカを野生に復帰させる活動をスライドで紹介

グアテマラ、ニカラグア、ハイチ、ブラジルなど、オバリー氏は様々な国で、捕獲されたイルカを野生に戻す活動をしてきました。各国で、政府の力や一般の人々の協力を得て、イルカを野生に復帰させる方法がスライドを使って紹介されました。イルカを野生に戻した国は、もうイルカを囲わないことを決めているということです。以下にオバリー氏の話の概要をまとめて紹介します。

イルカを野生に戻す過程は大体同じで、まず、水槽内の衰弱しているイルカに、薬と水を入れた魚を与えて元気を取り戻させ、つぎに、そのイルカが捕らえられた自然の海に囲いを作って、水槽から海の囲いに移します。このとき、イルカの胃や歯を調べ、病気がないかを確認します。そして、海の囲いの中でイルカが自分で魚を追って食べるようにさせます。このときオバリー氏がすることは、海中に魚をなげてやることくらいです。そこに魚が多くいれば、何もしないで、リハビリを自然の海に任せるそうです。

イルカは人間に訓練されて水族館で芸をするようになりますが、その訓練によって、心的にも身体的にも異常をきたし、自然の海に戻したときには、すでに自然の海では生きられなくなっています。ですから、さらに訓練してイルカを野生に戻すことはできません。訓練されたものをはずしてやる、つまり、訓練されたものを取り除いて野生に戻してやることが必要です。自然の海のリズムや潮の流れを感じることで、イルカは健康や野生の生活を取り戻していくそうです。オバリー氏がブラジルでイルカを野生に戻したときには、野生のペンギンがイルカに投げてやった魚を捕ろうとしてイルカと競争したそうです。こうした競争は野生で起こる自然なことで、このことが、イルカのリハビリの助けになったそうです。

自然の海の力がイルカを健康にしたら、周りを取り囲んでいたフェンスを開けてやるそうです。イルカを放すときには、後で追跡調査ができるように背びれに印をつけます。印が見つかれば、そのイルカが無事に生きていることがわかるからです。健康になったイルカが海に出ていくのを選べば、そうさせます。イルカを自由にするということは、イルカ自身に自分がどうしたいかを選んで、自分で決めさせることだからです。それが自由というものです。もしイルカが囲いに留まることを選んだら、そうさせるそうです。ブラジルで囲われていたイルカはフリッパーと名付けられていたイルカでしたが、自由になることを選んで海へ戻り、数年後にも生きているのが確認されたそうです。

囲われたイルカが受けるストレスとイルカへの待遇

水槽に入れられたイルカが、ひどい待遇をうけ、過度のストレスを受けていることをオバリー氏は次のように説明しています。

この会場(最大100名収容)は、和歌山県の太地町にある「太地町立くじらの博物館」の水槽より大きいです。この部屋に6人だけ残って、他の人は出て行っていただきます。そして、この部屋に残った人に、「食べものを運んでくるし、医療も受けられるようにするから、一生この中に居なければならない」といったら、どうでしょう。この人たちはストレスを感じないでしょうか?

コンクリートの水槽に入れられたイルカは隠れるところも全くなく、ひどい環境です。京都市動物園で展示されているヘビでさえ、展示室の中には、登ることができる木があり、体を隠す岩が置かれています。水族館のイルカよりもよほど良い待遇がされているといえます……何もない水槽に入れられたイルカは退屈して、退屈のあまり死んでしまうこともあるのです。

京都市にお願いしたいこと

 水族館へ行った人は、イルカの名前は何ですか?とか、どんなものを食べますか?とか、どんな芸をしますかと質問します。しかし、このイルカはどこからどうやって水族館に運ばれてきたのですか?とは、聞きません。自然の海で、捕らえられ、強制的に家族から引き離されてイルカは水族館に連れてこられるのです。

今、これから皆さんに見ていただくDVDには、イルカがどんなに暴力的な方法で捕獲されるかが映されています。こうして入れられた水槽の中では、イルカにかかるストレスが大きく、イルカの寿命は短くなります。これは水族館で生まれたイルカについても同じです。わたしは、こうした情報が人々に伝わるまで、京都に水族館を建設することを延期してほしいと思っています。

 わたしはこの4年間、“The Cove”(入り江)というドキュメンタリー映画の制作にかかわってきました。わたしの予測では、この映画は来年アカデミー賞をとることになると思います。この映画は今年サンダンス映画祭で観客賞を受けました。この映画には、イルカの追い込み猟をしている和歌山県太地町の映像が含まれています。この映画は、決して日本人を悪く描いたり、日本人を責めたりしていませんが、太地のほんの一握りのイルカ猟をしている漁師の話が出てきます。太地町は、この一握りの人々によって世界的に評判を落としています。この映画が上映されたら、太地にとっては大変不名誉なことになります。

 もし京都に水族館が作られることになったら、自然を尊重しているという京都の肯定的なイメージが覆されます。そして、太地のイメージが京都に重なってくることになります。しかし、もし京都が水族館建設にNOと言えば、京都は世界に向かって、力強い肯定的なメッセージを発信することになります。
では、DVDを上映することにします■

イルカフォーラム
写真提供:いきもの多様性研究所

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2009年3月9日(月)京都市役所を陳情訪問

要望書提出
京都市に「京都水族館(仮称)建設の中止を求める文書」を提出

リチャード・オバリー氏が、前日(8日)にイルカフォーラムを主催した環境保護団体のメンバーとともに京都市役所を訪問し、イルカの追い込み猟及び水族館についての世界情勢に関する印刷物やDVDを提供し、水族館建設に反対する理由を説明しました。そして、海外21カ国の71団体及び3名の海外の海洋動物学者が署名した「京都水族館(仮称)建設の中止を求める意見書」を京都市長の代理として応対した「京都市建設局水と緑環境部緑政課」の伊豆英明課長に手渡しました。京都市長は、当日市議会開催中のため、この場には出席できませんでした。しかし、伊豆課長からは、すべてを門川市長に間違いなく伝えるという約束をいただき、また、写真撮影にも応じていただきました。

京都市役所内の市政記者クラブでの記者会見

前述の伊豆課長との面談ののち、京都市役所内の市政記者クラブで記者会見が行なわれ、オバリー氏が記者たちの質問に答えました。市議会の開催中でしたが、毎日新聞、京都新聞、デイリー読売、共同通信の記者が出席し、翌日には、4社(毎日新聞、京都新聞、読売新聞、京都民報web)がオバリー氏の記事を掲載しました。特に毎日新聞は、講演中のオバリー氏の写真を掲載して「京都水族館建設に反対」「イルカ捕獲は残酷」というタイトルで、京都の水族館問題を大きく取り上げました。

海外からの団体署名数が倍増、ついに150団体を超える

エルザ自然保護の会は、京都水族館建設に反対する人々の署名を国内で100名余り集めて京都市長に送った後、海外の自然・環境・動物保護団体に「京都水族館建設中止の要請書」への署名を呼びかけました。その結果、今年(2009年)2月末までに21カ国から74団体・個人(海洋動物学者)の署名が集まり、上述したように3月9日にオバリー氏とともに京都市役所に赴いて「京都水族館(仮称)建設の中止を求める文書」を手渡し、建設中止を訴えました。

その後も海外団体からの署名数は、さらに増え続け、リチャ-ド・オバリー氏の尽力もあって、現在156団体に達しています。本会ではこれを、京都市及びメディアに送る予定です。

京都水族館建設予定地
京都水族館建設予定地

京都水族館(仮称)建設についての詳細が、「いきもの多様性研究所」に掲載されています。
また、「いきもの多様性研究所」では、水族館建設に反対する署名も集めています。ご協力ください。
ホームページはhttp://www.jca.apc.org/~qzu03325/ikimono.htm

リチャード・オバリー氏のプロフィール
アメリカ、フロリダ州在住。1939年生まれ。Save
Japan Dolphins連盟団体代表。アース・アイランド研究所所属。1960年代に、世界的にヒットしたテレビ番組「わんぱくフリッパー」のイルカ調教師として活躍したが、フリッパー役のイルカの死をきっかけに、イルカの保護及び野生復帰活動に転じ、以来約38年間、世界各地でイルカの救済に尽力している。1991年、「地球と全地球生物の環境保護」のために尽力したとして、国連環境計画委員会から「環境保全賞」を受賞。日本で翻訳されている著書として、「イルカがほほ笑む日」(TBSブリタニカ1994年)、「イルカのハッピーフェイス」(地湧社1994年)がある。
他に“To Free A Dolphin”(Renaissance Books, 2000 ):日本語翻訳書は未刊。

■Save Japan Dolphins連盟
日米英スイスの環境・動物保護団体6団体(「動物福祉協会」、「アースアイランド研究所」、「動物擁護の会」、「エルザ自然保護の会」、「オーシャン・ケア」、「キャンペーン・ホエール」)で構成。すべての活動を平和的、合法的、非暴力的に進めるという方針のもとに、海洋を広く回遊する野生動物であるイルカは、世界的な資産であり、人種、国籍を問わず、その保護のために声をあげることは当然のことであるという視点に立ち、イルカの無差別殺戮に反対し、イルカ保護について、一般的な意識が高まるよう様々な活動を行なっている。