イルカ介在療法事業中止
会報No.126より (2004年2月10日発行)
香川県さぬき市が 「イルカ試験飼育場」でのイルカ介在療法事業を中止
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さぬき市がイルカ施設事業を中止した経過
四国の香川県さぬき市がイルカの試験飼育事業を中止しました。この事業は合併前の旧津田町が計画して同市が引き継ぎ、年間約2,500万円の委託料を民間会社に支払って継続していくかどうか、今後の方策を検討していたものです。
本会事務局では、昨年(2003年)9月に、さぬき市が、イルカのヒーリング施設の企画を存続し、推進することを考慮中であると聞き、この企画に反対し、市がイルカ介在療法施設の存続計画を取り下げるよう要請しました。
さぬき市の施設には、和歌山県太地で「追い込み猟」(*)によって捕獲さ
れたバンドウイルカが囲われ、すでに試験飼育が開始されており、昨年9月か10月に、市は、このイルカ事業の存続に向けて、次年度の予算を計上する予定でした。しかし、このイルカ施設におけるイルカ介在療法事業企画には、多くの問題点があり、本会では、問題点を指摘すると同時に本会制作のビデオ「日本のイルカ猟-水族館用・食用イルカ捕獲の実態」を添えて、さぬき市長に事業中止を呼びかけました。
(*)【注】イルカは魚ではありませんので、本会では「漁」ではなく「猟」の表記を使用しています。
当時すでに、かなりの学者がこの計画に関心を示して支持を表明し、さらに「さぬき友の会(旧津田友の会)」が、この企画に賛同する署名活動を開始しており、9月10日にイルカの施設の存続を願って21,272の署名をさぬき市に提出しました。本会では、リチャード・オバリー氏及びマーク・バーマン氏のシンポジウムで、イルカ施設事業の中止を呼びかける署名活動をすると同時に、大手海外団体に支援を依頼しました。
その結果、約1ケ月ほどの内に国内だけでなく、海外から約900通のメールやファックスが、さぬき市長へ送られました。さらに、本会では、海外34団体の連名で(団体のメンバーや支持者数は、何百万人にのぼるものです。)重ねてさぬき市長にイルカ事業の中止を訴えました。市長は予算計上の時期を12月まで引き延ばしてこの件を検討した結果、ついに市の予算を計上せず、事業を中止することを決めました。
今後に残された問題:
さぬき市長は、イルカの事業を中止した理由について、イルカの施設利用者が減少しているなかで、年間2500万円の委託料を支払い続けることが負担であること、また、イルカ施設のある瀬戸内海の環境がイルカの生存にとって不適であること、そして、19カ国から約900通の中止要請が市長に届けられたことをあげています。
さぬき市が事業から撤退したことは、評価に値しますが、ここで問題になるのは、イルカの施設はさぬき市の所有、その施設にいるイルカは、民間会社の所有であることです。さぬき市がこの事業に積極的な関与を止めたとしても、もし現在の施設を民間会社に貸し出して、イルカ事業の存続を認めるとすれば、イルカは、同じ過酷な環境におかれることになります。また、イルカが死ねば、追い込み猟で捕えたイルカが補給され続けます。
さぬき市の施設のイルカは、5頭の内、すでに2頭が死んでおり、現在、生き残っている3頭の家族(群れ)は、追い込み猟で、すでに殺されていると考えられます。捕獲された場所へ放せば、再度イルカ猟で捕獲される恐れがあります。しかも、イルカの所有者は、イルカ介在療法と称して、野生のイルカを購入して利用している民間会社です。残されたイルカをどう救えるのか、現実には、非常に厳しい状態です。
ただひとつ、今できることは、さぬき市の劣悪な環境下で利用されるイルカをこれ以上増やさないことです。そのためには、さぬき市が全面的にイルカ施設を閉鎖し、イルカ事業へのかかわりを止めることが必要です。
本会では、昨年のさぬき市議会が休会する前と、今年、市議会が開会したときに、第2、第3の要請書を送り、イルカの施設を閉鎖することを求めました。これには、海外45団体の自然・環境・動物保護団体が連名で加わっています。
さぬき市の施設のイルカ
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会報126号掲載の要望書 | ※最新要望書は緊急報告をご覧ください |
さぬき市長 赤澤申也様 お礼と要望 拝啓 日頃市政にご尽力いただき、ありがとうございます。 私は、まず始めに、赤澤市長がイルカ介在療法の企画を中止し、来年度の予算割当てを行なわなかったことに、心からのお礼を申し上げます。 中止の理由のひとつとして、市長はイルカの施設がある瀬戸内海が、イルカの生存にふさわしくない環境であることを挙げられましたが、このことは、適切な指摘であり、赤澤市長が動物に対して残酷な決断を下さなかったことに、再度お礼申し上げます。 私は、以下のことをさぬき市長赤澤様に御願いします。 1) さぬき市のイルカ施設を閉鎖し、イルカを利用しない企画を考えてください。 2) アスク・ジャパン株式会社がイルカまたは他の動物を使って、さぬき市の施設を利用することを許可しないでください。私は、イルカが株式会社アスク・ジャパンの所有下にあり、同社がさぬき市の施設を使ってイルカを使ったビジネスを継続することを望んでいると聞いています。しかし、もしさぬき市がそれを許すなら、さぬき市は、「動物虐待」事業を支持し、また、それに参加することになります。施設内でイルカを使用することを許可すれば、「施設を拡大してイルカのヒーリング・センターにするには、環境が適切でない」とした市長の発言と矛盾します。 私は赤澤市長が今回下された勇気ある決断の筋を最後まで通し続け、再度、正しい決断をしてくださるよう強く御願いします。 敬具 |
2003年9月、さぬき市長宛に当会が提出した計画中止の要望書
(2003年9月16日付)
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