全滅したTaiji Five
日本のオルカ情報
1997年に和歌山県太地町で捕獲された5頭のシャチ(オルカ)は、国際的に"Taiji Five"(タイジ・ファイブ)と呼ばれています。実際には、1頭が妊娠していたため,5頭と胎児1頭の合計6頭ということになります。最後にたった1頭生き残ったオルカが「クー」と名付けられた雌のオルカで、このオルカが、2008年9月19日に名古屋港水族館で死亡しました。オルカの所有者は太地町立くじらの博物館ですが、いわゆる「繁殖のための学術研究」という名目で2003年10月から名古屋港水族館に貸し出されていました。今年10月に両水族館のあいだのローン(賃借)契約が切れるため、それを見越して、太地町は町議会で承認を受ける前に、すでに名古屋港水族館と新たな契約を結んでいたそうです。それは5年間の契約で、1年5,000万円、総計2億5,000万円が太地町の収入になるところでした。繁殖といっても、名古屋港水族館にいたオルカは、クーだけで、雄のオルカはいませんでした。
クーの死は、主要新聞で取り上げられましたが、以下に死亡までの経過の概要を記します。今夏、名古屋港水族館は、クーが風邪をひいて体調を崩したと発表していました。しかし、7月半ばには、クーの血液からヘルペスウィルスが検出され、体内にも皮膚にも炎症が見られ、白血球が増加していたそうです。食欲もなく、まったく食べられない日が続きましたが、9月はじめに一時的に回復し、その後、また、食べられなくなって2週間後、9月19日午前7時55分に水槽の底に沈んでいるのが見つかりました。体重2.7トン、体長6.1メートル、18歳の若さでした。オルカの雌の寿命は人間とほぼ同じで80年は生きるといわれていますが、人間に捕獲されてからわずか11年で命を落としました。
太地町は、数年前からオルカの捕獲を計画しています。昨年(2007年)11月には、太地町立くじらの博物館と深い関係のある、東京海洋大学海洋科学部の加藤秀弘教授が中心になって、東京海洋大学で「シャチ(オルカ)」のシンポジウムを開き、オルカ捕獲に向けての基礎固めをしました。現在、捕獲の具体案は出されていませんが、今回のクーの死亡が、今後、野生オルカ捕獲計画を推進することになるのではないかと懸念されています。
本会では、1997年に行なわれたオルカ捕獲の詳細を描写したDVDを作成し2008年10月27日に本会が開催したイベントの「イルカから地球環境を考える - 海・イルカ・人 2008」で初上映しました。このDVDはエルザ自然保護の会(〒茨城県つくば市筑波学園郵便局私書箱2号)から入手できます。(送料込みで1,000円。)
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