動物の権利ということが、ここ数年、日本でもいわれるようになりました。 英語をそのままカナ書きして、アニマル・ライト、またはアニマル・ライツ(複数表現)という表現も見られ、そのために活動する専門の民間団体もできはじめています。多くの自然保護/環境保護団体では、 設立の当初から何らかの形で 動物の生きる権利を守るための活動をしてきましたし、本会でもむろん動物たちが人間と同様この世に生きる権利をもっていることを基本理念にすえて活動してきました。そして、今も同じ考えにのっとって活動しています。
しかし、日常生活が人間の問題で手一杯な世間一般の人々にとっては、動物の権利という考えは、人権ほど差し迫った問題としてとらえられていないのが実情だろうと思います。 特に、動物産業に多少とも係わりをもつ社会人は、「動物の権利なんてことを考えてたら、商売あがったりだ」というのが正直なところでしょうし、 また動物産業によって生産される肉乳製品や魚介類などを日常消費して暮らす大多数の人々も「動物の権利なんて考えていたら生きちゃいけないよ」という感想をもつのではないかと思います。
しかし、環境破壊が激化する今日、わたしたちは、いやでも人間以外の生き物の生存権について真剣に考えなければならない時代を迎えました。 じつは、動物の権利に関する世界宣言は1914年にさかのぼる古い歴史を持ち、1972年には国連に持ち込まれ、人権思想と同様、世界共通の倫理として通用し始めています。しかし、このことは、日本ではあまり知られていません。いっぽう、1998年にフランスで、動物の生存権についての宣言文や宣言に関する系統的な歴史解説をまとめたブックレットが刊行されました。そこで、本会では、G・シャプーティエ博士とJ=C・ヌエット博士よりブックレットの日本語翻訳権及び翻訳刊行の許可をいただき、日本語訳を会報に少しずつ紹介してきました。その一部、「動物の権利に関する世界宣言」をここに紹介します。
この宣言は、後述のマーク・ベコフ博士の著書「動物の命は人間より軽いのか ― 世界最先端の動物保護思想」に提示されている問題を考えるとき、また、現在の動物園水族館問題を考えるとき、さらに、日本が深くかかわっている捕鯨問題を考えるときに、大いに参考になると思います。
目次
ページのTOPへその1:
動物の権利に関する世界宣言 - Universal Declaration of Animal Rights ?その2:
動物を真に理解して人間の生き方を問う最新入門書として本会が推薦する新刊書: 「動物の命は人間より軽いのか
― 世界最先端の動物保護思想」その3:
動物園と水族館を考える
動物園・水族館は反自然、反社会的な施設その4:
捕鯨問題を考える:
「クジラは誰のものか ― 2005年国際捕鯨委員会(IWC)年次総会の取材報告」